意外や意外!工事費の高い今の方が収支が良い?


昔と比べて工事費はアップしたが金利は著しく低下

 ご存じの通り、最近はアベノミクスによる景気回復や震災の復興需要、オリンピックの開催準備等々で工事費はうなぎ登りです。

 工事費がアップしているにもかかわらず家賃が一定であれば当然ながら利回りはダウンします。そして利回りがダウンすると通常は収支が悪化しますので経営的に苦しくなるというわけです。

 このように工事費はかなりアップしているのですが、一方で金利は極めて低い状態が続いています。私は30年以上も前から土地活用のコンサルをやってきましたので、その当時の金利がどれほどであったか見当はつきます。


 それでも間違えるとまずいのでネットで調べたところ平成元年から4年頃の変動金利はだいたい8.5%前後でした。その後、ドンドンと下がり続け、今は1%程度です。


実際に計算し、収支を比較してみると・・・

このように工事費はアップしているが金利は極めて低い今、昔と比べて不動産経営の環境は良くなっているのでしょうか、それとも悪くなっているのでしょうか?

実際に計算して確かめてみましょう。次の<計算の前提条件>をご覧ください。

<計算の前提条件>

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 ケース1は20数年前を想定しています。建築費が安いので利回りは13%と高くなっていますが、一方で金利は5%と高めにしました。これでも上記8.5%と比べるとそれほど異常な数値ではありません。


次のケース2は比較的最近の数値です。利回りを7.9%としていますが、都内であればそれほど高いとは思いません。そして金利は1%としていますが、これは金融機関や借りる人により若干上下します。

そして最後のケース3ですが、工事費がもっと高いケースを想定して、ケース1の2倍、2億円としました。そのため利回りは6.5%とかなり低くなっています。金利はケース2と同じく1%です。


結果、昔と今で収支はそれほど変わらず・・・

それでは次の<資金収支の計算結果>をご覧ください。資金収支とは家賃収入から借入金返済額と諸経費を差し引いた額のことです。所得税等は考慮しておりません。

<資金収支の計算結果>
ケース1 331万円
ケース2 338万円
ケース3 203万円

ケース2の利回り7.9%はケース1の利回り13%よりかなり低いのですが、資金収支はほぼトントンです。別に何か細工したわけではありません。

それでは次にケース3をご覧ください。203万円となっています。他のケースと比べると、かなり少ないですね。資金収支というのは所得税等を差し引く前ですから、所得税等を考慮すると資金的にあまり余裕がありません。2億円も借金して資金収支がこの程度ではリスクが高いと考えられます。

いかがですか? ケース3はともかくケース2のように建築費がアップしても金利がかなり下がったので収支にそれほど悪影響を与えていないことが証明されました。


実際は昔の方が経営的に厳しかった

このように20数年前は利回りこそ高かったのですが、高金利だったため収支はそれほど良くありませんでした。

ところで以上の計算には現実にはありえない想定があります。それはいずれのケースも借入期間を30年で計算している点です。

20数年前は建物の耐用年数より長い期間で借りることはできませんでした。この事例は木造アパートなので耐用年数22年です。したがって実際はそれより短い期間でしか借りられなかったのです。

にもかかわらず他のケースと比較する関係上、いずれのケースでも30年で計算したのです。

そこで参考のためケース1に関して借入期間を20年とした場合で計算してみました。すると資金収支は183万円になりました。331万円だったものが183万円になったのです。ケース3と比べてもかなりの減収です。


なぜデフォルト(債務不履行)にならなかったのか?

このように厳しい状況であったにもかかわらずデフォルトになる不動産オーナーはそれほど多くありませんでした。
 どうしてでしょうか?それは賃貸物件を建てた後、金利がドンドン下がってきたことと、金融機関がリスケ(リスケジュール)に応じてくれるようになったからです。

リスケというのは返済期間を延ばすことですが、金融機関が他の金融機関との競争上、建物の耐用年数以上に長くしてくれるようになったのです。

特に別の銀行に借り換える場合には金融機関としても新規客の獲得になるので融資条件を大幅に緩和してくれたというわけです。


これからの不動産経営の見通しは?

以上がここ30年ほどの不動産経営の実態です。それではこれからの不動産経営はどうなるでしょうか? 以下、私の予想を書いておきますので参考にしてください。

既に空き家が多いこと、少子高齢化により今後もますます空室が増えていく可能性が高いことを考えると、あまり積極的に打って出ることはお勧めできません。特に地方であるとか交通の便があまり良くない所では慎重に考えるべきです。

今まではリスケで救われたところがありますが、金融庁の指導もあり耐用年数を大幅に逸脱した借入期間とすることは難しくなります。また現在は史上最低の低金利ですから、これ以上の低金利は望むべくもありません。

このような状況下、工事費をできるだけ抑えながら、いかに競争力のある建物を供給できるかが勝敗の分かれ目になるのだと思います。

私は15~16年ほど前に「家主さん、地主さん、もっと勉強して下さい。」という本を出版しましたが、この本で言いたかったのはタイトル通り「もっと勉強して下さい」、ということです。

どんなけ話でもそうですが、大して勉強もしないで安易に取り組んでうまく行くわけがありません。

サブリースがあるからと安易に契約するのではなく、入居者に喜ばれるにはどういった工夫をすればいいか徹底的に考えてください。そうすれば自ずと道は開かれるでしょう。