後継者がいない場合の対処法とは?

  事業経営者

一般の事業経営者の場合も個人経営と法人経営の両方があるが、信用面ではやはり法人のほうに軍配が上がる。個人の場合には家計と事業上の経理がドンブリ勘定になりやすいことと、規模が大きくなるとどうしても法人でないと無理が生ずる。

いずれにしても事業経営者の場合には士業のような資格試験に合格する必要はないが、自分の子供に経営者としての素養がないとやはり難しい。そこで最近では一族以外の従業員に後を託すとか、そうした人材もいない場合にはM&Aで事業そのものを第三者に売却するケースも増えている。


  農家

鹿谷会計では農地の宅地並み課税がスタートした平成4年に専用ソフトを開発して都市農家向けに始めたコンサルティングがNHKや日経新聞等で紹介されたため数多くの農家の方々から相談を受けた。

結果、やはり想定どおり後継者に頭を悩ませている方たちが多くいた。日本のような狭い農地で野菜などを栽培しても採算に乗せることは難しいのが現実だ。そこで農業を止めてアパート経営などを始める方が増えている。農業よりも収益性が高いというのがその理由である。

ところで鹿谷会計のお客様のケースを考えてみるに、全ての農地を宅地化してアパートなどを建てるのではなく、家賃収入で生活資金やら相続税の納税資金を賄い、農業を維持している方が多い。農地を生産緑地として申請すると固定資産税や相続税などの税金が極端に安くなるので維持するのが楽チンというわけだ。

もし全ての農地を宅地化してアパートなどを建てると相続の発生時期によっては相続税がベラボウな額となり、土地を処分せざるを得なくなるし、逆に全ての農地を生産緑地にすると農業収入だけとなり生活資金にも事欠くことになる。また農家の場合、一般的にご自宅や倉庫などが広いので相続税がそれなりにかかり、結局、かなりの土地を処分せざるを得なくなるケースが多い。

我々が30年近く前に専用ソフトを開発して農家の方のコンサルティングを始めたのは、生産緑地か宅地化かで農家の方の人生設計があまりにも大きく変わってくるので事前に何度もシミュレーションし、意思決定の判断材料を提供したいと考えたからである。

その後も様々なシミュレーションソフトを作り続けているが、全て同じ理由である。税務とソフト開発の両方の知識を習得している会計事務所としてやりがいを感じているし、今では我々に課された使命であると考えている。


  家主さん、地主さん

 アパートやマンション、貸ビルなど収益物件を所有している家主さんや土地を貸している地主さんの事業承継はいかん。不動産の場合は一般の事業経営とは異なりサブリースというやり方がある。つまり不動産経営のプロに一切の経営を任せてしまうやり方だ。

これであれば経営の才能や意欲がなくても不動産オーナーとしての地位を維持することはできる。ただし、サブリースはあくまで居住用物件に限られるし、貸ビルや貸店舗、駐車場などは対象外というケースが多い。これらの物件は専門家と雖も一定の入居率を維持することは難しいのだと思われる。
また居住用であっても立地条件の良くない物件もやはり対象外となることが多い。このように考えるとサブリースというのは誰がやってもある程度の入居率を確保できる物件に限られるので、そうした条件から外れると自分で管理するか一般の管理委託にせざるを得ない。
ところでサブリース物件であろうと一般の管理物件であろうと毎年確定申告する必要があるし、何かと煩わしいことが次々と発生する。本業が忙しいと、そうした時間を確保すること自体難しい場合もあるので、いっそのこと売却してしまいたいと考える人も少なからずいる。

最近ではサラリーマンでそうした物件を購入する人が増えているので、先祖から受け継いだ不動産であっても維持するのが時間的にも精神的にも難しいのであれば売却するのも止むを得ないのではないかと考える。

何事もそうであるが人間には得手不得手がある。
不動産のような煩わしいものには一切タッチしたくないという方もいれば、ネットから様々な設備や備品を購入してはご自分で取り付けることに生きがいを感じている方もいる。

思うに、不動産自体も自分を愛してくれる人に世話してもらいたいと考えていても一向に不思議ではないし、そのほうが社会的に意義のあることではないだろうか。掃除もしないでほったらかしにされるより、いつもキレイキレイしてもらいたいというわけだ。


  会計士や税理士などの士業

会計士、税理士、弁護士、司法書士などの士業の場合は、それぞれの国家試験に合格する必要があるため、合格しないと子供は後を継げない。
もし子供が合格するまでに亡くなると即廃業ということになる。
そこで最近では税理士法人など士業毎に法人を設立できるようになってはいるが、自分の子供が合格しないと法人の経営者になれないので実質的には同じことだ。

因みに鹿谷会計の場合は昨年(令和元年)長男が苦労の末、会計士に合格した。次男、三男も会計士を目指して勉強しているので後継者問題はどうにかなりそうである。
ただし、3家族が食べていけるかどうかは別問題である。