広大地とは、その地域における標準的な宅地の面積に比べて著しく面積が広大な土地のことですが(※)、こういった土地の評価額は次のような簡便な方式により計算することになっています。

※原則として「普通住宅地区等に所在する土地で、各自治体が定める開発許可を要する面積基準
  (開発許可面積基準)以上のもの」であるか否かで判断する。例えば、市街化区域であれば次の
  ようになる。

     三大都市圏  ・・・・・・   500u
     それ以外の地域 ・・・・ 1,000u

ミニ開発分譲が多い地域に存する土地については、開発許可を要する面積基準に満たない場合
であっても広大地に該当することがある。


※1.
路線が2以上ある場合には原則として、最も高い路線価を採用する。
2.
この規定によって評価する広大地は5,000u以下の土地が対象となるが、5,000uを越えるものについても適用することは可能である。ただし、その場合でも補正率の下限は0.35となる。
3.
上記の計算式で計算した価額が通常の評価額を上回る場合には通常の評価額によって評価する。

 <面積別広大地補正率の計算例>

面  積
広大地補正率
1,000u
0.55
2,000u
0.50
3,000u
0.45
4,000u
0.40
5,000u
0.35 

 例えば、2,000uの土地の場合には広大地補正率が0.50ですから、通常の半分で評価できるということ。凄いですね。大体においてシブチンな国税当局が、なぜこのような大盤振る舞いをしたのか? その理由は以下のとおり。

 まず広大地を戸建て住宅用地として区画割りした上で販売しようとすると、道路部分は潰れ地として販売対象から除かれるだけでなく、道路を作るためには造成費も別途必要。
 また宅地分譲業者が当該住宅用地を売却するためには様々な費用がかかるし、自分達の利益を確保することも必要、というわけです。

 つまり広大地を一般の人が購入しやすいように細分化して分譲しようとすると様々なコストがかかるので、広大地そのものの仕入れ価格を算定する場合、当然ながら、それだけ安く評価せざるを得ないということです。
 いずれにしても、広大地の場合には上記のような見積もり計算をした上でないと評価できないことから、思い切って土地の広さだけでザックリと評価しようとしたのです。

         

 つまり改正前の財産評価通達では次のように公共公益的施設用地となる部分の面積を算定する必要があったのですが、この作成に多大なお金と時間を要したのです。
 また、このこととも関連するのですが、どうせ不動産鑑定士等の専門家に開発想定図等の作成を依頼して公共公益的施設用地となる部分の面積を算定するのであれば、いっそのこと広大地の評価通達によることなく鑑定時価により申告する納税者が増え、税務署としても、その対応に苦慮したというワケです。


 このように広大地の計算自体は極めて簡単になったのですが、広大地評価を適用できるか否かの判断が逆に恐ろしく難しくなったのです。
 広大地ということから土地の面積だけで判断できるようにしてくれれば有難いのですが、次のようなワケの分らない事例を次々と列挙し、適用できる範囲をドンドンと狭くしていったのです。


<広大地に該当しないケース>
1.
大規模工場用地の場合
2.
マンション適地の場合
3.
既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地
4.

現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地(例えば、大規模店舗、ファミリーレストラン等)

5.
原則として容積率300%以上の地域に所在する土地
6.
公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地
 

 財産評価基本通達(24-4)では上記のうち1、2、6以外は触れていなかったにも拘わらず、その後の国税庁内部における通達の解釈指針というべき「資産評価企画官情報」(16年情報、17年情報)に次々と除外規定が設けられたので、実務では今大混乱が生じているのです。

 もちろん具体的指針が出されることは我々納税者側でも参考になり良いことではあるのですが、不動産評価を専門とする不動産鑑定士により書かれた書籍を読むと矛盾だらけのようなのです。

 いったん大盤振る舞いをしたが、惜しくなったのか運用面で厳格化しようという風に取れるのです。こういう流れを見ていると本当に日本人らしいですね。情けないという言葉がピッタリです。

 いずれにしても広大地に該当するか否かで評価額に雲泥の差が生じます。そこで詳細については別の機会に譲るとして、ここでは広大地に該当しないケースについて、解釈に当たってのポイントをいくつか挙げておきますので参考にして下さい。




 「大規模工場用地」(5万u以上の土地)については別途、財産評価基本通達に評価方法が定められていますので、それによって評価することになります。

 なお、この場合には広大地のような補正率はありませんので、原則として路線価に単純に面積をかけて計算することになります(20万u以上の場合のみ95%を乗じて計算する)。



 広大地評価は戸建て住宅用地として分譲することを前提としているため、同じく広大な土地であってもマンション等を建設するのに適している土地(これをマンション適地という)の場合には、道路等の潰れ地が生じないので対象外です。この理由については首肯できますね。ただし、個別事例ではいろいろ問題がありますが・・・。



 これについては具体的な説明が何もなく、広大地に該当しない事例として16年情報に突然現れたのです。

 「既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地」については広大地に該当しない、ということですから、素直に読むとマンションとかビルが建っている土地は広大地に該当しないということになります。

  これについて裁決例では建ててから相当時間が経っている場合には広大地として認めるとか、また大阪国税局管内の通達によるとアパートのような2階建ての場合にはOKであるとか、統一見解がないものだから、皆さん思うに任せて適当にやっている感じです。
 また不動産鑑定士によっては3階建ての賃貸マンションでも認められた、あるいは私の場合には4階建てでも認められた、といった世にも不思議な世界が繰り広げられているのです。
 これで何が課税の公平でしょうか? もし広大地評価を適用して税務否認を受けたらどうなると思われますか? 過少申告加算税とか延滞税がウンとかかるのです。
 もしや国税当局は、税収不足の折、ワザと判断に迷うようにして過少申告加算税等をガッポリと徴収しようとしているのでしょうか?
 まさかそんなことはないでしょうが、広大地の評価については、このようなデタラメな状況になっているということだけはよく理解しておいて下さい。

 評価を簡単にしようとして改正した評価通達であったにも拘らず、逆の結果を招いているのです。

 こういった状況の下、私の事務所では、こと広大地についてはリスクを最小限に抑えるため、経験豊富でオシの強い不動産鑑定事務所と提携して万全を期しております。



 これについても上記の「3.既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地」と同じくイマイチ分かりません。「有効利用されている」とはいったいどういう意味なのか、ということです。

 ただし、これについては17年情報で

『これは、比較的規模の大きい土地の有効利用の一形態として大規模店舗等を例示的に示したものである。したがって、大規模店舗等の敷地がその地域において有効利用されているといえるかどうか、言い換えれば、それらの敷地がその地域の標準的使用といえるかどうかで判定するということであり、いわゆる「郊外路線商業地域」(都市の郊外の幹線道路(国道、都道府県道等)沿いにおいて、店舗、営業所等が連たんしているような地域)に存する大規模店舗等の敷地が、この「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」に該当する。
 一方、例えば、戸建住宅が連たんする住宅街に存する大規模店舗やファミリーレストラン、ゴルフ練習場などは、その地域の標準的使用とはいえないことから、「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」には該当しない。』


と書かれているので、何となくイメージは湧くのではないかと思います。



 指定容積率が300%以上の地域内にある場合には、戸建住宅の敷地用地として利用するよりも中高層の集合住宅等の敷地用地として利用するほうが最有効使用と判断される場合が多いことから、原則として上記2.のマンション適地と見なされるということです。

 なお地域によっては指定容積率が300%以上でありながら、戸建住宅が多く存在する地域もありますが、このような地域は指定容積率を十分に活用しておらず、

  1将来的にその戸建住宅を取り壊したとすれば、中高層の集合住宅等が建築されるものと認められる地域か、
あるいは、
  2例えば道路の幅員などの何らかの事情により指定容積率を活用することができない地域であると考えられます。

 したがって、2のような例外的な場合を除き、評価対象地が存する地域の指定容積率が300%以上である場合には、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」と判断することになります。



   

 広大地評価はそもそも戸建て分譲業者が戸建て住宅分譲用地として開発する場合に相当規模の公共公益的施設用地(開発道路、公園等)の負担が生ずるので、それらの潰れ地を考慮して補正率を設定したわけです。

 ところが、次のようなケースでは道路の開設が必要ないので広大地評価は適用できません。ご注意下さい。

(1)

公共公益的施設用地の負担が、ごみ集積所などの小規模な施設の開設のみの場合・・・原則として道路を開設する場合に限定されるので、ごみ集積所程度の設置では要件を満たさない。

(2)

セットバック部分のみを必要とする場合・・・建築基準法42条2項の規定によりセットバックを必要とする場合の当該土地部分は開発区域内の道路開設には当たらない。

(3)

道路に面しており、間口が広く奥行が標準的な場合・・・開発区域内に道路を開設する必要がない。




(4)
道路が二方、三方または四方にあり、道路の開設が必要ない。


(5)

開発指導等により道路敷きとして一部宅地を提供しなければならないが、道路の開設は必要ない。

セットバックを必要とする土地ではないが開発行為を行なう場合に道路敷きを提供しなければならない土地部分については開発区域内の道路開設に当たらない。

(6)

路地状開発を行なうことが合理的と認められる場合・・・開発区域内に道路を開設する必要がない。


路地状開発とは、路地状部分を有する宅地を組み合わせ、戸建住宅分譲用地として開発することをいう。

なお、「路地状開発を行なうことが合理的と認められる」かどうかは次の事項などを総合的に勘案して判断します。

@
路地状部分を有する画地を設けることによって評価対象地の存する地域における「標準的な宅地の地積」に分割できること
A
その開発が都市計画法、建築基準法、都道府県等の条例等の法令に反しないこと
B
容積率および建ぺい率の計算上有利であること
C
評価対象地の存する地域において路地状開発による戸建住宅の分譲が一般的に行なわれていること

(注)
上記の(3)〜(6)の区画割りをする際の1区画当たりの面積は評価対象地の存する地域の標準的使用に基づく「標準的な宅地の地積」になる。