アパートとか賃貸マンションを建てる目的の一つに相続税の節税がありますが、その土地が広大地(こうだいち)に該当する場合にはアパート等を建てることにより逆に増税になる場合があるのです。

 こんなことを言うとビックリされるかも知れませんが事実なのです。以下、増税になるケースを具体例を挙げて詳しく解説しておきましたので、ジックリと勉強して下さい。

 なお、広大地という言葉を始めて聞いたという方は次の  というボタンをクリックして内容をよく理解しておいて下さい。

                     


《農地に賃貸マンションを建てるケース》

3,000uの土地というと広いように感じるかも知れませんが、農地の場合には都内であってもこの程度の広さはそれほど珍しくはありません。また路線価をu当たり30万円としましたが、東京の世田谷区、練馬区、板橋区当たりでは平均的です。
 なお建物の固定資産税評価額ですが、ここでは建築費の40%と仮定しています。いろいろな書物を読むと50%ぐらいで計算しているケースが多いのですが、比較的高級なRCの賃貸マンションの場合はだいたい建築費の35%〜40%位になります(私のお客様のケース)。




 まず最初は当該土地が広大地に該当しないケースでの相続税額を、@建築後、間もなく相続が発生した場合、A建築してから15年後に相続が発生した場合、B建築してから30年後に相続が発生した場合 の3つのケースで計算してみますと次のようになります。

 

(注) いずれも法定相続割合で相続したものとして計算しております。 なお税額は1次、2次の合計額です。以下、同じ。



まず現状のまま、つまり更地の状態で相続が発生した場合ですが、その場合の相続税はなんと2億7,050万円です。全体の財産が9億2,000万円にもなりますから、それほどおかしくはありません。なお、この場合の実効税率は29.4%(2億7,050万円÷9億2,000万円)。
ところが、この土地に賃貸マンションを建築して間もなく相続が発生した場合には1次、2次合わせても962万円しかかかりません。実に2億6,000万円の減税です。賃貸マンションの経営がいかに相続税の節税に効果を発揮するか、これでお分かりいただけたことと思います。



それでは次のデータをご覧下さい。これは賃貸マンションを建設してから15年後に相続が発生した場合の税額です。



上記@と異なる計算の前提条件は次のとおり。
○建物の相続税評価額(借家権控除後) … 建物は古くなると評価額も低くなる。
    2億2,400万円 → 1億5,200万円

○借入金残高 … 返済すると当然ながら残高は少なくなる。
    8億円 → 5億円 (15年後でも半額にはならない)


いかがですか? 建築前の相続税は当然ながら変わりませんが(土地の評価額を将来とも不変としているため)、建築後は962万円から6,875万円に増えています。この理由は建物の評価額が下がる以上に債務控除としての借入金残高が少なくなるからです。それでもまだ2億円以上の節税にはなっています。

それでは借入金の返済が終了する30年後の相続税はどのようになるでしょうか? 次の表をご覧下さい。



上記@と異なる計算の前提条件は次のとおり。
○建物の相続税評価額(借家権控除後) … 建物は古くなると評価額も低くなる。
     2億2,400万円 → 8,000万円(RCのマンションの場合には耐用年数が47年なので、30年後でもこの程度の評価額になる)

○借入金残高 … 30年後は当然ながら0となる。
     8億円 → 0億円

 

いかがですか?  建築前の相続税は当然ながら変わりませんが、建築後は2億3,565万円に増えています。
それでも3,485万円の節税になっているのは土地の貸家建付地としての評価減1億6,200万円(9億円×60%×30%)が建物の評価額8,000万円より多いからです。

いずれにしても建築当初は962万円と激減していた相続税も30年後は2億3,565万円にもなるのです。この膨大な額の相続税をどうやって支払うのですか?

マンションを建てなければ2億7,050万円の相続税であっても一部を売却するなり物納で納税できますが、マンションを建てたばかりに納税できなくなってしまう可能性が高いのです。
「私の親父は高齢なので、そんなに長生きしない。心配ご無用!」という方であれば良いのですが、そうでなければ大変な事態になります。

相続というのはいつ発生するか分りません。したがって、いつ相続が発生しても大丈夫なように納税用地を確保しておくとか、マンションからの手取収入を無駄金に使ってしまわないで一部を預金しておくとか、生命保険の掛け金として充当するといった対策を併せて実行しておくことが大切、なのです。

 

       

 ところで以上の事例ではまだ「アパマン建てたら相続税が増えた!?」にはなっておりません。いずれのケースでもアパマンを建てたほうが相続税は安くなっています。

 そこで次はいよいよ「アパマン建てたら相続税が増える」ケースについてご説明いたします。





  上記の A.そもそも広大地に該当しない場合 というのは面積は広大であるが、潰れ地がほとんど生じない土地であるため、そもそも広大地としての評価減が適用できない土地にアパマンを建てるケースを想定しています。
 上記  の説明の中にある「広大地に該当しないケース」の「公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地」のケースです。

 一方、これからご説明します事例は、更地の状態であれば広大地としての評価減が適用できるが、アパマンを建てることによって広大地としての評価減が適用できなくなるケースです。
 上記  の説明の中にある「広大地に該当しないケース」の「既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地」に該当するケースです。

  まず最初は建築後、間もなく相続が発生した場合です。

更地であれば広大地評価が適用できるというわけですから、まず最初に広大地評価の計算からスタートしましょう。次の計算式をご覧下さい。

 <広大地評価の計算>

   広大地の評価額=正面路線価×広大地補正率(※)×面積
  =300,000円×0.45(※)×3,000u
  =4億500万円

  ※広大地補正率=0.6−0.05×3,000u÷1,000u =0.45


9億円だった土地の評価額が広大地評価の適用を受けると4億円余りに激減するのです。したがって、このままの状態で相続が発生すると、相続税は7,362万円で済みます。
もし A.そもそも広大地に該当しない場合 のように広大地評価が適用できなければ2億7,050万円もの相続税がかかるわけです。

全く同じ面積で路線価も同じなのに広大地評価が適用できるか否かで相続税にこれだけの差が生じるのですが、何となく常識とは相容れない感じですね。

それはともかくアパマンを建てることで相続税はどうなるでしょうか? 建築後の欄を見ますと962万円となっています。
これは A.そもそも広大地に該当しない場合 と同額です。当然ですね。いずれのケースも広大地評価は適用できないわけですから同額になるのは当たり前です。

いずれにしても建築後、間もなく相続が発生した場合には、たとえアパマンを建てることで広大地評価が適用できなくなったとしても6,400万円ほど減税になるということです。

アパマン経営が相続税の節税に効果があることの証ですが、これを見て喜ぶのはチト早い。次の計算例をご覧下さい。今度は賃貸マンションを建築してから15年後に相続が発生した場合です。

       


この数値を見る限り15年後ではまだアパマンを建てるほうが有利ですね。それでは30年後はどうでしょうか? 次の表をご覧下さい。


30年後で比較すると大逆転が起こっています。何の対策も行なわず更地のままにしておけば7,300万円ほどの相続税で済んでいたのが、アパマンを建てたばかりに1億6,200万円も余計に相続税がかかるようになったのです。

私が「アパマン建てたら相続税が増えた!?」というタイトルで長々と説明してきた事例に漸く辿り着きました。ウソではなかったでしょう。いきなり結論部分だけを説明しても分りづらいと思ったので、そもそも広大地に該当しないケースと比較しながら説明してきたわけです。

ところで以上はアパマンを建てたら広大地に該当しなくなるケースですが、アパマンを建てても相変わらず広大地として認められるケースがあります。
ただし、どういった場合に適用でき、どういった場合に適用できなくなるのかはケースバイケースです。裁決例を見ても勝ったり負けたりしておりますし、当事務所と提携している不動産鑑定士に伺ってもいろいろあります。
もし、ご自分の所有している土地がどちらになるのか知りたい方はご連絡下さい。不動産鑑定士とも相談しながら調査させていただきます。





 このように、アパマンを建てれば広大地にならないケースと、なるケースの両方があるわけですが、ならないケースについては上記Bで解説しましたので、ここでは後者のアパマンを建てても相変わらず広大地として評価できるケースを取り上げたいと思います。

それでは次の計算例をご覧下さい。これは「建築後、間もなく相続が発生した場合」の相続税を比較したものです。

       

まず現状のまま、つまり更地の状態で相続が発生した場合ですが、その場合の相続税は7,362万円です。上記Bのケースと同じです。いずれも更地の状態であり広大地評価を適用できるということですから同額になるのは当たり前です。

そして建築した場合の相続税は0万円となっていますが、計算過程を見ますと課税価格は大幅なマイナス。したがって、他に財産がガッポリあっても、まだまだ相続税はかかりません。

それでは次に建築後15年経ってから相続が発生した場合はどうでしょうか? 次の表をご覧下さい。

15年経ってもまだ相続税はゼロのままです。それでは30年後はどうでしょうか? 次の表をご覧下さい。

       

 30年後になると、さすがに相続税がかかるようになっておりますが、広大地評価が効いているのか、更地の場合とほとんど変わりません。




  以上、長々と説明してきましたが如何でしたか? ご理解いただけたでしょうか? 多分、頭がコンガラガッテイルのではないかと思います。そこで上記の3つのケースについて相互に比較する形で一覧表示しておきましたので、ジックリとご覧下さい。

A.そもそも広大地に
 該当しない場合

B.アパマンを建てることで
 広大地に該当しなくなる
 場合

C.アパマンを建てても
 広大地として評価できる
 場合
建築前
2億7,050万円 
7,362万円 
7,362万円 


直後に相続
962万円 
962万円 
0万円 
15年後に相続
6,875万円 
6,875万円 
0万円 
30年後に相続
2億3,565万円 
2億3,565万円 
7,593万円 

 
 なお、以上はあくまで1つの事例を様々なケースで比較計算したに過ぎません。お客様によって条件はかなり異なりますので、できれば資産税に詳しい会計専門家にご自分のケースで計算してもらって下さい。

 相続というのはいつ発生するか分りません。そして、既にご理解いただけたと思いますが、いつ相続が発生するかによって相続税額には雲泥の差が生じるのです。

 建てたら終わりではありません。借金の返済が進むにつれて相続税額は徐々に増えて行き、終盤にかけてドンドンと税額が増えていきます。
 また、キャッシュフローの観点から見ても、借入金の返済が終盤を迎える頃から返済額に占める支払利息が急減していきます。

 このことは不動産所得が増えていくことを意味するのですが、それは取りも直さず所得税とか住民税が急増していくという大変厳しい状況が待っているということでもあります。別に脅しているわけではありません。コンピュータで計算すると、このようになるということを説明しているだけです。

 そして具体例で見てきましたように、広大地にアパマンを建てた場合、開発を了した土地であるということで広大地として認められなくなるケースと、相変わらず認められるケースに分かれます。
 いずれになるかによって相続税額は月とスッポンほど違ってきます。したがって、もし広大地に該当するような広い土地を所有されているのであれば、できるだけ早急に対応するようにして下さい。

 「時、既に遅し」ということになるかも知れませんが、遅くなるに連れて解決策は減っていくのです。