節税のアドバイスをすることは我々の仕事ですから、できるだけ積極的にご提案したいとは思いますが、節税を考えるに当たって是非シッカリ理解していただきたいことがあります。
それは 節税をすることによって逆に資金繰りが悪化するケースがあるということです。例えば、「小規模企業共済制度に加入する。」という節税方法がありますが、これは要するに自営業者に対する国の退職金制度と言うことができます。
この制度に加入しますと満期のときに退職金が支払われるわけですが、掛け金は課税所得から控除できますので所得税の節税になります。
つまり所得税の節税を図りながら退職金の準備ができるというメリットの大きい制度です。
掛け金は月額1,000円から7万円まで任意に選択できます。より多く加入しますと当然ながら、それだけ課税所得が減るというわけです。
このお客様の場合、奥さんとお子さん(就職せず、身内の不動産管理会社の役員になっている)がそれぞれ最高限度額である月額7万円を掛けておりますので、
年間の掛け金総額は
84万円 × 2人 = 168万円 となります。
※ご主人は現在サラリーマンなので加入できません。
つまり毎年168万円の掛け金を支払い続ければ将来かなりの退職金をもらえるわけですが、現時点では168万円だけ生活資金が少なくなるのです。
もちろん所得税の節税にはなりますが、100%減額されるわけではありません。
例えば、所得税等の適用税率を20%とした場合、
減額されるのは33.6万円(168万円×20%)だけ です。
したがって、実質134.4万円(168万円-33.6万円)ほど生活資金が少なくなってしまうのです。
節税して資金繰りを楽にしようとしたことが、かえって生活を苦しくしてしまうことになるというわけなのです。いくら税金を払うのがイヤだとしても、生活できなくなったのでは本末転倒ですし、キューキューでは人生楽しくありません。
このように節税には落とし穴があるということをシッカリと認識していただきたいのです。